大願成就

夢が叶った。叶っている。
子どもの頃からプロレスラーになりたかった。強靭な体、倒れても立ち上がる力、魅力された観客に夢を与える力、プロレスラーに憧れた。夢見ていた。なりたかった。でもなれなかった。
今ならなれる。本当のプロレスラーではないかもしれない。虚像かもしれない。流行に乗っているだけかもしれない。でも俺はプロレスラーになれたと思っている。
乳児のいる先輩の机に朝そっとミネラルウォーターを置いている。偽善かもしれない。
ランニングついでに見つけた自販機で買ったミネラルウォーターを置いている。買い占めかもしれない。
ただあった水をただ買っただけだし、自己満足かもしれない。
自己満足かもしれない、でも俺はプロレスラーだと思っている。なくても走って一生懸命探す力、困っている先輩に届ける力、俺はプロレスラーだと思っている。やっぱり自己満足かもしれない。勘違いかもしれない。でもここでプロレスラーが何もしなくて何がプロレスラーだと思う。恥ずかしさをわかって言えば、正義の味方はいつだってプロレスラーだ。
例え自己満足でもプロレスラーになれたことに感謝しているし誇りを持っている。俺は伊達直人だ、タイガーマスクだ、そしてプロレスラーだ。人に対して強いんだ。
年初に広がった伊達直人ブーム、今はその名前を聞かない。もしかしたら伊達直人は被災したのかもしれない。じゃあ全国の伊達直人タイガーマスクになればいい。お前は虎だ、虎になるのだ。誰もタイガーマスクにならないなら俺がタイガーマスクになる。俺がプロレスラーになる。


なんてね。仕事はできないけれど水を買うことは頑張ればできるからね。