『赤い指』を読んだ

事件を起こした側の視点で書かれているので誰が犯人なのかという謎解き要素は皆無。
犯人が誰なのかではなく、どうしてそのような事件が起きたのか、なぜ彼らは犯行の隠蔽を決めそれを実行しようと狂っていくのか。普通の家族が狂い崩壊していく異常性にゾッとした。
犯人を誰にするかという悪魔のような発想と苦しんだ末にそれを実行する狂気には息苦しさとそれをするかという悲しさがあった。
ただ、加賀刑事が見抜いた事件の真相の先の「真実」には驚いた。と、同時にさらに悲しくなった。気付かない側にも、気付いてほしい側にも。どこかで止められたんじゃないだろうか、こんなことにならない道があったのではないか、と思えて仕方ない。悲しすぎる。
最後の最後に描かれている加賀刑事と父との隠された絆、たまらなくよかった。こういう繋がりもあるのか。
これで「卒業」から「新参者」まで加賀恭一郎シリーズを一通り読んだ。たとえ犯人に対しても人情味溢れた接し方をするが、犯罪には断固とした態度を取る。非常に魅力的な人物。もっともっと加賀恭一郎シリーズを読みたいと思った。

赤い指

赤い指