『なぎさの媚薬』

シゲマツ的官能小説。しかしシゲマツが書くからにはただの官能小説じゃない。青春官能小説。
エロいけれどエロだけじゃない。2つの話とも芯には哀しみが書かれている。エロ色の強い『愛妻日記』に近いのかなと思い読み始めたら全然違った。哀しい。最初はそれこそ官能小説でドキドキしながら読んでいたが、その先にドキドキしていた胸がぐっとしめつけられるような哀しみがあった。それを知った時、「君を抱きたい―現実には抱けなかった君を。」という帯の言葉が非常に切ない意味を持って迫ってくる。
ただヤりたいから抱きたいというのではない。なぎさの媚薬であの頃に戻る。中学のとき好きだった子、高校のとき好きだった子と・・・これはエロいからというわけではなく、子どもにはこの気持ちがわからないからR18、もっというならR22だと思う。逆に今大人で、中学や高校の頃を振り返ることすら忙しくてあまり振り返れない人にとってはたまらなく胸がドキドキする小説だと思う。
青春官能小説。

なぎさの媚薬―敦夫の青春|研介の青春

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