『手紙』を読んだ

最近映画公開され、買った文庫の帯に「涙のロングセラー」と書いてあったけど、泣けはしなかった。
それよりも重さが遥かに上回った。
小説よりも残酷な事件が現実で起こり、それらの詳細を知ると現実の犯罪者を擁護する気にはならない。
しかしこの小説の場合複雑な思いになる。働きすぎて体を壊した兄の、盗みを働こうとした動機が弟の大学進学費用を得るため。最初から家のお婆さんを殺すつもりはなかった。
それらが冒頭書かれていて、それから獄中の兄の手紙が載る。この展開を読んでも全く許す気にはなれない。人を殺しておいて呑気に明るい手紙か、と思う。
そしてその手紙を受け取った弟には「兄が強盗殺人犯」という事実にずっと悩まされる。進学、バンド、恋愛、就職と何か弟が行動を起こそうとする度にその事実で差別される。正直都合よすぎな問題の起こり方にはやや薄さを感じたけど、それでも重い。
後半兄、弟、遺族の手紙、話よりそれぞれの思いが語られる。
最後まで読んだけど、はっきりいってわからない。内容がわからないのではなく、どう捉えてどう考えればいいのかが非常に難しくわからない。自分の近くに強盗殺人犯の弟がいたら、小説に出てきた多くの人物のように腫れ物に触るような扱い、つまり「差別」をしてしまうような気がした。
読み終わっても残る話。

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)