『舞姫通信』を読んだ

全く理由なしに自殺した兄。外見は頬のホクロ以外そっくりな双子の弟。その弟に亡くなった恋人(兄)の姿を投影する佐智子。佐智子の芸能プロで自殺志願のタレントとしてデビューした自殺未遂経験のある城真吾。教師である弟のいる高校で、毎年誰かが発行するこの学校で飛び降り自殺をした少女の舞姫通信。
この小説は「自殺」がテーマ。何度も出てくる「人はいつでも死ねる」という言葉、城真吾の「死ぬために生きる生き方だって、あっていいんじゃないんですか」という言葉、原島さんの「思い詰めるから、死ぬのか?」「真面目に生きて、精一杯考えて、それだから自殺するなんて、おかしいだろう」という言葉など、生と死について様々な場面が重い言葉を交えて出てくる。
読了した時、今までの重松清作品とは違いもやもやした感じが残った。重松清独特の心情や仕草の表現や、ラスト約30ページの展開は圧巻だったけど、他の部分がうまく説明されていない感じだった。原島さんと原島さんの娘はあのままでいいのか、城真吾の本当の姿は何だったのかなど、消化不良のまま終わった感じがした。それと、弟を完全に恋人だと思い、弟との関係も子供のことも全てリクちゃんの姿として見ていた佐智子については理解できないし、読んでいて腹立たしさを感じた。
あまりに詰められすぎていて息苦しかった。

舞姫通信 (新潮文庫)

舞姫通信 (新潮文庫)