『下町ロケット ゴースト』を読んだ

下町ロケットシリーズ最新作。
会社や日本の産業の未来よりも自らの野心のほうが重要な、いかにも危険そうな的場という男による帝国重工のロケット部門撤退の危機、新たな分野に進出して会社を少しでも安定かつ技術力強化したい佃、帝国重工を飛び出した二人の天才が作ったギアゴースト、まさかの過去を持つダイダロス、THE・悪役という感じの弁護士……と今回も様々な角度からこの極上なエンターテインメントを楽しむことができた。面白い!


コストダウンという名の下請け叩き、上が続けて発注してくれるという下請けの馴れ合い、波風立てずに会社人生を渡っていきたい管理職と本当に危機感を持って改革をしたい若手、どれもわかるし実際にいるから非常に感情移入して読んでしまう。特に大手による下請け叩きの話はこれじゃいつか日本の産業は潰れると胸が苦しくなった。
とにかくどの章も夢中になれる面白さが詰まっているので、体が熱くなりページめくる手に力が入ってしまう。終盤の特許訴訟の大逆転っぷりはスカッとした。


そこで終わればいいのに今作は何とも言えない苦い終わり方になってしまう。復讐、過去のしがらみに憑りつかれた決断と終わり方は下町ロケットシリーズらしくないなと思ったけど、どうやらそれらの話も含めて全て秋刊行予定の『下町ロケット ヤタガラス』で完全決着するらしい(最後のページに予告があった)。おお、これはいい。こんな終わり方は下町ロケットじゃない、どんな結末になろうと完全決着してほしい。今から非常に楽しみ。去った天才エンジニアも絡んでくるのだろうか。


また、会社同士の話ではないけれど、今作では農業と親の高齢化という今後日本全体に必ず大きく影響してくる話も殿村家を舞台として書かれている。
改めて農業の大変さ、崇高さ、必要さが心にぐさりときた。ある意味本編以上にこっちのほうが気になった。日本の産業と農業はこの先どうなってしまうのか。


殿村の農業も伏線になってロケットと農業がメインになりそうな『ヤタガラス』。秋が非常に楽しみだ。


下町ロケット ゴースト

下町ロケット ゴースト