帰省終了

雪になれない雨が屋根を叩く音を聞きながら帰省最終日の朝を迎えた。電気毛布と厚手の羽毛布団に包まれ、雪国の布団は本当に気持ちいい。布団の中でもぞもぞする動きを発電に使えないだろうかとくだらないことを正月から考えてしまう。


それにしても今年は雪が少ない。高校卒業して実家を出てから毎年帰省しているけど、間違いなく今年が一番雪が少なかったと思う。いや、少ないというより、「ない」。大晦日から今日まで、雪が降るのを見たのは元旦の数十分程度だと思う。そして湿り気のある雪で積もることはなかった。雪国に住んでいる両親には悪いが、せっかく故郷に帰ってきたのだから自分が子どもの頃見慣れていた辺り一面雪の景色を見たかった。雪かきするくらいの意気込みもあったし。


雪はほぼ降らなかったけど、空はいつもどおりの故郷だった。どんよりとした日本海側の空、きっと他の地域の人からしたら憂鬱になる色だろうけど、雪国生まれとしては「これこれ」とむしろ嬉しくなる。小さい時から冬はずっとこの空を見て、この空の下で走ったり雪合戦していた。雪が降らなくても常に灰色でどんよりとした故郷の空が、自分にとっては冬の空だ。


帰省初日はみんながこれまでの間溜まっていた話したいことをひたすら話しまくり、会話のキャッチボールが成り立たないといういつもの状態になった。みんなきっとキャッチボールしようとは思っているんだけど、これだけは話したいということが買っちゃうから結果豪速球ドッジボールになっちゃう。
今になればこうやって冷静に分析できるんだけど、いざそのドッジボールのコート(居間)にいるとついついイライラしてしまう。そのイライラもみんな近くにいるから感じられるのにね、ごめんなさい。こうやって帰省が終わるとそう思って反省してしまうのもいつもと同じ、進歩がない、ごめんなさい。
目線を合わせずお互いテレビを見ながら話すくらいがちょうどいい距離感なのかもしれない。同居して毎日一緒に過ごし話していたら違うと思うけど、きっと今はそう。年に数回しか帰省しないからもっと近い距離のほうがいいのかもしれないけど、今はこれ。


父は相変わらず掃除大臣として掃除を毎朝欠かさず行い、良く食べ良く飲む。母からは年々父が頑固になってきてもうやんなっちゃうと熟年の愚痴を聞く。そんな二人だけど春になればまた車で各地の桜を見に行くのだろう。父は父で家のことをいろいろ考えたり、厳しいながらもほんのりと優しさをしめらせて話したりしてくる。そんな二人に数日だけど一緒に過ごして、改めて自分は心のどこかで親離れできていないのだと感じた。自立して自分で生活できているんだけど、やっぱり心のほんの隅には両親がちょこっといて支えてくれている気がする。いつまでもガキのままの息子ですまない。また帰省するわ。


新幹線の窓から雪のない風景を眺めながらそんな風に帰省を振り返っていたら、なんだか少しさみしくなった。言葉のドッジボールも相手がいるから、コートがあるからできるんだよなあと思ったら、もっとボール投げてボール受ければよかったなあと朝からちょっと暗くなってしまった。どんより、故郷の空と一緒だ。隣にはスヤスヤ寝ている妻。また来る、いつか帰る。
東京駅に着いてホームに降りたら1月とは思えない暖かさに驚いた。そしてカラッと晴れた青空。故郷からほんの4時間ちょっとで気温も空の色もこんなに変わるのか。正直暖かさに喜んだけど、故郷の顔にくる寒さもよかった。今住んでいるところもホーム、故郷もホーム。
今年もシンプルに自然を愛して故郷を忘れずに毎日を楽しむぞ!